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2019年10月21日
【ランニングと膝】SSC機能その①
【膝のバネを使って走る】
前回のブログで登場したSSC(ストレッチ・ショートニング・サイクル)機能について観ていきます。
SSC機能は、主に腱組織で発揮されます。
腱と言えば、アキレス腱です。
フクラハギの筋肉の下の白くなっている所が腱組織になります。
アキレス腱は、腓腹筋とヒラメ筋の二つの筋肉と繋がっています。
人体最大の腱組織と言われます。
しかし実は膝関節周辺にも沢山の腱組織があります。
まず腸脛靭帯です。
上の画像でスネの骨と繋がる白くなっている所が腱部分になります。
断面積、長さ共に大きな腱組織でアキレス腱に匹敵し、大殿筋と言う極めて強い筋肉と繋がっています。強靭な腱組織になります。

そして鵞足に繋がる縫工筋(ほうこうきん)、薄筋(はっきん)、半腱様筋(はんけんようきん)です。
特に半腱様筋は、名前の通り「半分が腱の様な筋肉」で、腱組織がかなり発達しています。
しかもハムストリングの一つでもあるので筋肉も大きく強い力を発生させ、SSC機能も強く発揮できます。
鵞足の腱組織は、三つに分かれていますが、三つを合わせれば腸脛靭帯と並ぶ強靭な腱組織になります。
このように膝にも、強力な腱組織があり、それらを合計した断面積はアキレス腱を十分に上回ります。
SSC機能は、ランニングの能力(ランニングエコノミー)の重要な要素です。
しかし、ブログでも書いた通り、SSC機能の発揮には個人差が大きく(ジャンプ貢献度0%~73%)、ジャンプ動作でSSC機能を全く使えていない人もいれば、十分に使いこなしている人もいます。
これはSSC機能の持っている構造的な特徴によるものです。
この特徴を知らないといつまで経っても身に付ける事が出来ません。
特徴①
「SSC機能は、伸ばされないと発揮できない」
SSC機能は、筋肉と腱組織が協力して発揮する能力です。
これを筋腱複合体と言います。
筋膜と腱組織は、二種類の繊維組織(弾性繊維と非弾性繊維)が網状に交差した構造をしていて、通常それが波のように折りたたまれた状態になっています。

弾性繊維と網目と波状の構造により、筋腱複合体はバネと全く同じ機能を発揮します。
バネと同じですので伸ばされなければ、一切機能を発揮出来ません。
私達がジャンプする際にも、一度かがんだ方が遠くへジャンプできるのは、筋力だけでなく腱も伸ばされて力が蓄えられるからです。
特徴②
「タイミングが大事」
SSC機能は、瞬間的に伸ばされて、瞬間的に縮まる事で発揮されます。
ジャンプ動作の実験では、ジャンプのタイミングを僅かに遅らせただけで、SSC機能が低下し、ジャンプ力が減る事が分かっています。
着地後、時間にして0.03~0.07秒のタイミングになります(ケニア人の着地動作から推計)。
私達の感覚的には、ほぼ同時の感覚です。
着地の瞬間に発生する力なので、「蹴って走る」、「着地後に重心移動させる」ような感覚では、SSC機能は殆ど使えていないことになります。
特徴③
「意識して使えない」
SSC機能は、腱組織の動きが重要になりますが、この腱組織は脳の神経支配(遠心性神経支配)を受けてなく、意識して使う事が出来ません。
腱組織を意識して力を込めても全く反応しません。
その為、SSC機能を発揮させるには、着地の前に体の動きをそうなるように誘導する必要があります。
つまり着地の仕方によって決まります。
ジャンプ力は着地の仕方によって増すわけです。
着地してから力を込めて蹴っても遅いのです。
ジャンプの練習よりも着地の練習の方が重要になります。
特徴④
「予備緊張が必要」
予備緊張とは、体が動く前(着地する前)に筋肉が活動を始めている状態の事を指します。
SSC機能は、筋肉は伸びず、腱組織だけが伸ばされた時に発揮します。
そして腱組織が縮む時に、タイミングよく筋肉も縮むと効果を発揮します。
着地衝撃で腱組織と共に筋肉も伸びてしまうとSSCの効果は、大きく減ってしまう事が実験によって確認されています。
筋肉が伸びてしまうとその分腱組織の伸びが足りず、筋肉の縮むタイミングも遅れてしまいます。
着地の際に筋肉を伸ばさずに、腱組織だけを伸ばすには、筋肉をあらかじめ緊張させる必要があります。
これが予備緊張です。
単に着地して関節を曲げるだけでは、SSC機能は発揮されません。
予備緊張がある事で、筋肉はタイミング良く力を発揮させることができます。
ランニングで言えば、着地する直前0.03~0.06秒前にフクラハギやハムストリングなどが、活動を始め緊張している状態になります。
しかし、この予備緊張は意識して行うことが難しく、殆ど無意識(感覚的)に行われます。
着地前の体の動かし方や日頃の練習で感覚的に身に付ける必要があります。
着地の練習を繰り返すことによって神経系機能が改善され、予備緊張を的確に発生させることが出来るようになります。
マカウ選手が、着地前に「振り戻し動作」をしている事を書きましたが、あの動きが脚に予備緊張を発生させる動きになります。


振り下ろし動作は、後ろから前に持ってきた脚を止めて、かつ後ろに引き戻す(振り戻す)動きになるので、大殿筋、ハムストリング、フクラハギの筋肉を使います。
振り下ろし動作の時に予備緊張が発生します。
振り下ろし動作を身に付ければ、SSC機能も同時に身に付ける事になります。
つまり着地の練習は、予備緊張の練習であり、SSCの練習であり、ジャンプ力の練習であり、フォアフット走法の練習になります。
それぞれを分けて考える必要は無く、最初の動きさえ間違わなければ一連の動きとして体が自然と反応してくれます(バイオメカニクス的な力が発生する為)。
人間の体がそのように進化しています。
ランニングに於いては、着地直前の動きと着地の練習が最も重要になります。
着地が上手くできれば、自然とジャンプ力は増します。
ランニングの基本であり、大事なのは「着地の練習」になります。
特徴⑤
「柔らかすぎる筋肉と腱ではSSCは発揮されない」
筋肉と腱組織が柔軟性があって柔らかいとSSC機能は低下する事が、いくつもの実験で明らかになっています。
体は柔らかい方が良い。筋肉と腱組織は、柔らかく伸びた方が良いと従来言われてきました。
しかし実験で、静的ストレッチはケガ予防効果が無い事が分かっています。
静的ストレッチとは、アキレス腱を伸ばしたり、開脚や前屈などの柔軟体操です。
さらに静的ストレッチは、疲労回復効果が乏しいことが分かっています。
柔軟体操と疲労回復はあまり関係が無いようです。
そして静的ストレッチによって、筋腱複合体の弾力性が低下してSSC機能が低下することも分かっています。
SSC機能だけで無く運動パフォーマンスが低下します。
また、開脚や前屈で体がべったり付くような人は、腰痛になりやすい傾向があるそうです。
これはハイパーモビリティによって関節異常になってしまうからです。
筋腱複合体は、適度に硬い(弾力性のある)方が機能を発揮します。
また筋肉が温まっている方がいいようです。
ですので動的ストレッチが、準備運動には最適なようです。
【注意】
筋肉と腱は硬い方が良い、と言う意味ではありません。。
機能的で弾力性がある方が良いという事です。
過度な柔軟性も過度な硬さも、体をおかしくしてしまいます。
また、ここで述べている「柔軟性」は、筋肉を伸ばしたりする時の柔軟性です。
筋肉を「触った時の柔軟性」ではありません。
筋肉を触った時に硬いのは、過緊張や疲労状態であり、最適な状態ではありません(肩こりがその一例)。
特徴⑥
「筋肉の負担が減る」
実験では、SSC機能を発揮できると、ジャンプ力が増すのに、筋出力が減ることが分かっています。
ランニングで言えば、速いのに、軽く走れるという感覚になります。これは凄い。
長距離走では、ゴリゴリの太い筋肉の脚は、重くて不利になります。
SSC機能を利用できれば、脚は自然と細くなります。
ですのでランナーで、脚が太くなったという人がいますが、間違いなく走り方の問題と言えます。
特徴⑦
「腱組織は、疲労しにくい。エネルギーも酸素も使わない」
腱組織によるジャンプ力は、機械的なものなので、筋肉に比べ遙かに疲労しにくいです。
しかもエネルギーも酸素もそれほど必要としないので、持久走では圧倒的に有利になります。
腱組織の耐久性(走れる距離)は、練習で伸ばせますので、日頃の練習が重要です。
特徴⑧
「SSC機能は、練習で向上する」
SSC機能は、人間本来の機能なので誰でも出来ます。
そしてSSC機能は、練習度合いによって向上します。
ですので、あきらめず地道に基本練習をやれば出来ます。
特徴⑨
「SSC機能を使うつもりで練習しないと身に付かない」
実験結果では、単にジャンプの練習をしただけでは、筋力でジャンプするようになってしまいSSC機能が身に付かなかったケースもあるそうです。
現代人は、裸足の習慣が無く、裸足で走ることも無い為、SSC機能を使ったことが余りありません。その感覚もありません。
その為、筋力でジャンプしたり、筋力で走る癖が付いているので、何も考えずにただジャンプしてもSSC動作は、身に付きません。
筋力を使わずに、タイミングよく跳ねる意識を持って練習する必要があります。
蹴らずに走る感覚が必要になります。
特徴⑩
「SSC機能を実感するには時間が掛かる」
腱組織は、筋肉に比べ成長が遅い為、ランニングでの効果を実感するのに最低でも1か月はかかります。
また着地前の動作でSSC機能の発揮が決まるので、動作練習も必要になります。
練習回数が少なければ、もちろんその分、腱組織の成長は遅れ、動作も身に付きません。
ですので、いきなりやっても実感できないことも多いと思います。
気長に地道に基本動作の練習が必要になります。
2019年10月13日
【ランニングと膝】膝のランニング機能その②
【関節の角度で衝撃吸収能力が増す】
関節の角度で筋出力が増す、と書きましたが、同時に衝撃吸収能力も増します。
さらにジャンプ力まで増します。

同じ速度で走った山本亮選手は、腓腹筋の力を81%も使っていました。
ケニア人は、速く走っているのに筋力を使わない。矛盾しています。
この差は、筋肉と腱組織の持つ機能をうまく使えているかどうかの差になります。
脚の機能を使うのに欠かせないのが、「関節の角度」と「タイミング」になります。
全ての筋肉は、骨と付着する部分が、腱組織に変化しています。

この腱組織は、筋膜から出来ています。
筋膜は、筋肉を包み込んで束ねている組織です。
最近、マッサージなどで流行っていて、肩こりや腰痛の原因とされてます(わたくしは、筋膜が本当の原因とは思っていません)。
しかしそれだけではなく実際の筋膜の機能は、筋肉の力を伝達する機能と体を支える機能、衝撃を吸収する機能があります(こちらの方がメインの機能だと思います)。
<筋膜の機能>浅筋膜、筋外膜、筋周膜、筋内膜の4種類がある。
・筋肉を束ねる。
・筋力伝達機能
・支持機能(伸びない事で関節と筋肉を守っている)
・衝撃吸収機能
・筋出力増加機能
それ故に筋膜は「第二の骨格」とまで言われ、筋肉の機能イコール筋膜の機能と言っても過言ではありません。
筋膜は、実際には4種類あり、腱組織と繋がっているのはその内の2種類です(筋外膜、筋周膜)。
この二つの筋膜は、筋肉の中(筋束)までまんべんなく伸びて、筋肉の外側だけでなく、(筋内膜を介して)全ての筋繊維と繋がっています。
筋膜は、筋肉の外側に一枚あるのではなくて、その殆どは、筋肉の中に存在しています。
さて、筋肉から伸びる腱組織は、丈夫であるとともに弾力性があり、伸びたり縮んだりします。
腱組織は、瞬間的に伸ばされると、一瞬の間を置いて(0.03~0.07秒くらい)、その反動で縮もうとする性質があります。
このゴムのような、バネのような、反動で縮む力を弾性エネルギーと言い、かなり強力な力を発揮します。

実際、筋膜や腱組織は、細かく折りたたまれた構造になっていて、バネ構造をしています。
ジャンプ運動のいくつかの実験では、ジャンプによって体が飛ぶ力の内、0~73%までが筋膜、腱組織などによる弾性エネルギーである事が分かっています。
つまりジャンプ力とは、筋肉の力ではなく、筋腱複合体の弾性エネルギーの力と言っても過言ではありません。
ちなみに弾性エネルギーが0~73%と、実験結果に大きな幅があるのは、弾性エネルギーを利用したジャンプには、技術的側面が強く、加えて筋肉と腱組織の弾力性(性能)が大きく影響する為です。
つまりいきなりやっても使いこなせないが、普段からやっているれば誰でも筋力とは関係なくジャンプ力は増します。練習が必要ですが、誰でも出来ます。
この弾性エネルギーのもう一つの特徴が、衝撃吸収機能(貯蔵機能)です。
着地時にタイミングよく、関節が曲げられると、腱組織が伸ばされ着地衝撃が吸収されます(自動車のサスペンションと同じ原理)。
そして次の瞬間、伸ばされた腱組織は縮む力を発生させます(再利用機能)。
この筋肉と筋膜と腱組織が持つ、弾性エネルギーの利用を「SSC機能(ストレッチ・ショートニング・サイクル)」と言います。
ケニア人ランナーを、「バネのある走り」、「軽やかな走り」とよく表現されます。その大きな要因がSSC機能の利用です。
彼らは、足首、膝、股関節を適度に曲げることによって、SSC機能を最大発揮させて、筋力ではなくバネの力で走っているのです。

SSC機能を利用できれば着地衝撃を減らす動作が、そのままジャンプ力を増す動作になる訳です。
着地と蹴るが同時に行えることになります。
ケニア人ランナーが速いのは、SSC機能の使い方が上手いからと言ってもいいと思います。
SSC機能が高いという事は、体の使い方が上手い、筋肉の使い方が上手いという事とイコールになります。
SSC機能は、特別なものではありません。
専門用語として聞くと特別なものに聞こえるかもしれませんが、人間なら誰しもが持っている体の機能です。
身近な例でいうと、縄跳びはSSC機能を活用した運動です。
事実ケニア人ランナーと日本人ランナーは、身体的な差が無いことが調査により分かっています。
心肺能力、血液、骨盤の形状や傾き、筋力などは、差がありません。
つまり生まれ付き脚が速い訳では無い、という事です。
そして調査論文によるとその差は、「技術的な側面(ランニングエコノミー)」であると結論付けています。
つまり日本人ランナーの走り方が間違っているという結論を出しています。
本当のフォアフット走法は、SSC機能を使えているかどうかです(他にもありますが)。
シューズの裏の削れ方の問題ではありません。
つま先で着地するのがフォアフット走法ではありません。
踵から着地しなければフォアフット走法ではありません。
SSC機能を利用し、着地衝撃を減らしながらランニングエコノミーを高める走り方が本当のフォアフット走法になります。
2019年10月05日
【ランニングと膝】膝のランニング機能その①
【膝関節は、角度で力が増す】
膝周辺の筋肉にも走る為の進化の仕組みあります。
腸脛靭帯です(上の画像黄色の部分)。
腸脛靭帯は、靭帯と名前が付いていますが実際には、筋肉から伸びる腱組織になります。アキレス腱と同じ組織です。
靭帯の定義は、骨と骨を繋いでいる組織となりますので、筋肉と繋がる腸脛靭帯は明らかに靭帯ではありません。
備考:腸脛部分は、面積が広く骨盤とスネを繋いでいる部分もあります。なので「靭帯」と言っても間違いではないのかもしれませんが、私達が動かしているのは、あくまでも「腱」になります。
腸脛靭帯は、大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん、上の画像黄色の部分)と繋がっているという説明が多いですが、実際は大殿筋と中殿筋と繋がっています。
大殿筋と中殿筋(黄色の部分)。
腸脛靭帯組織の70~80%は、大殿筋から繋がっているとも言われています。
ですので、腸脛靭帯は大殿筋に繋がる腱組織と言った方が正しいと言えます。
大殿筋は、人体最大、最強の筋肉と言われ、走る為に進化しています。
大殿筋は、歩行時にはあまり活動しません。
また人間と近い種であるチンパンジーやゴリラなどの霊長類では大殿筋はあまり発達進化していません(霊長類はハムストリングが発達している)。
単に立って、歩くだけなら、ハムストリングで十分出来ます。
直立二足で走れる人間だけが大殿筋を発達進化させています。
ちなみにですが、大殿筋は、4つの骨に付着し、3つの関節にまたがっています。
普通の筋肉は、2つの骨に付着し、1つの関節に作用(単関節筋と言う)しますから、大殿筋は別格の筋肉と言えます(影響力が大きい)。
そんな大殿筋や中殿筋、大腿筋膜張筋と繋がる腸脛靭帯は、強靭な腱組織になっています。
腸脛靭帯は、スネの骨(脛骨けいこつ)の真横に付着しているのではなく、前面外側に付着(上の画像黄色の部分)しています。
この場所に付着している事で、膝を曲げる(屈曲)だけでなく、スネの骨が内側に捻じれたり(内旋制限)、ランニングの着地の際に膝が内側に倒れ込まないようにする機能があります。
鵞足は、縫工筋(ほうこうきん)、薄筋(はっきん)、半腱様筋(はんけんようきん)の3つの筋肉の腱組織の総称です。
縫工筋(脚の内側の画像)
薄筋(脚の内側の画像)
半腱様筋(脚の内側の画像)。半腱様筋は、ハムストリングの一つです。
鵞足もスネの骨の真横ではなく、前面内側に付着(上の画像黄色の部分)しています。
その為、膝を曲げるだけでなく、スネの骨が外側に捻じれたり(外旋制限)、ランニングの着地の際に膝が外側に開かないようする機能があります。
腸脛靭帯と鵞足は、骨盤と繋がっています。
しかも股関節を中心にして取り囲むように骨盤のそれぞれ別の場所に繋がっています。
このように骨盤から伸びた筋肉が、スネの骨を左右から挟み込むように付着する事で、スネを安定させ、膝関節が捻じれないようにしています。
この構造がある事で、膝関節の位置が動いても膝関節を守り、姿勢を安定させることが出来ます。
この構造がある事で、膝の動きは股関節の動きによって決まり、連動します。
逆に言うと、股関節の異常や動きの悪さが、膝の不安定性に直結します。

この機能的な鵞足ですが、結構曲がっています。

筋肉も腱も真っすぐの方が、強い力を発生させることが出来ます。
鵞足は、膝関節をある程度曲げると真っすぐな状態になります。
つまり膝関節は適度に曲がっている方が、鵞足と縫工筋、薄筋、半腱様筋が、直線状態になり強い力を発生させることになります。

腸脛靭帯は、直線的に付着していますが、それに繋がる大殿筋の筋繊維は斜めになっています。
大殿筋は、股関節をある程度曲げると真っすぐな状態になります。
という事は、股関節が適度に曲がると大殿筋は、強い力を発生させることが出来ます。
そしてその強い力で股関節を伸ばす(伸展)し、同時に腸脛靭帯を通じて膝関節を後ろに引っ張る力を発生させます(スウィングさせる)。
この大殿筋の筋繊維の角度と鵞足の角度は、ほぼ一致します。


つまり股関節も膝関節も適度に曲がる方が、強い力を発生させます。
それだけではなく、股関節と膝関節が同じ角度(同じタイミング)で曲がると腸脛靭帯と鵞足が強い力を発生するという事は、スネの骨をしっかり固定し、膝関節の安定度を高めることにもなります。
以前、足関節の解説ブログの中で、足関節は適度に曲がる方が筋出力が高まり、安定すると書きました。
足関節が安定すれば、膝関節の安定度も高まり、力の伝達がスムーズに行われます。ランニングのパフォーマンスが上がります。
足関節が曲がるという事は、通常膝関節も股関節も同じように曲がっていることを意味します。
足首だけ曲げたら、体が倒れてしまいますから。
人間の体は、走る際には足首も膝も股関節もバスンス良く同じタイミングで、同じような角度で、適度に曲がるように構造的に出来ています。
ランニングでは、「腰高で走る方がよい」。
「頭を糸で引っ張られるような感覚で走るのが良い」と言われ膝も股関節も曲げない方がいいと思われています。
しかし実際には、脚はバランスよく「適度に曲がっている」方が強い力を発生させ、安定する構造になっています。
事実、大殿筋は股関節を15度以上曲げない(屈曲)と働きません。
ただ立っていたり、歩くだけでは大殿筋は殆ど使われないのです。
股関節を曲げた状態から、伸ばした時に初めて機能する筋肉になります。

ケニア人のランニングフォームを説明した中で、ケニア人は股関節と膝関節と足首が曲がっていることを書きました。
ケニア人の股関節屈曲角度と大殿筋の筋繊維角度は、ほぼ一致しています。
ですのでケニア人の方が人体構造に合った走り方をしています。
腰高で走る意識を持って、膝や股関節、足首を曲げないように踏ん張って走るというのは、脚の全体の筋出力を弱め、その分関節と靭帯の負担が増えることになります。
【注意】
「脚は適度に曲がる方がいい」と言うのは、骨盤後傾や骨盤前傾を意識して腰を落とすという意味ではありません。
「腰高で走る事に全くこだわらなくてよい」という意味です。
脚関節は、体幹の動かし方と腕の振り方を変えると自然とバランスよく曲がってくれます。
意識して、腰を落としたり、膝を曲げると、往々にして「曲げすぎ」状態になり、体の負担が増してしまいます。
2019年09月28日
【ランニングと膝】膝の構造についてその②
前回の膝の構造のブログを読んで疑問を持った方もいるかもしれません。
今回は、その疑問点を観ていきます。
疑問その①
「膝痛(変形性膝関節症)を防ぐには運動はしない方がいいのか?」ランニングをすると膝の軟骨はすり減ってしまうのでしょうか?

(ジオン公国ギレン・ザビ総帥)
膝を使いすぎて、軟骨がすり減ると一般には言われていますが、実際には「本来の使い方をしていない」から膝軟骨がすり減ります。
運動によって軟骨がすり減る症状が進行するとは、限りません(トップ選手は例外)。
むしろ運動は、膝痛を予防します。
ヨーロッパでの調査では、習慣3回以上の運動習慣のある人では膝痛が起きにくい事が分かっています。
運動習慣のある人は、脚の筋力が衰えにくく、肥満にもなりにくいからです。肥満は膝の負担が増します。
また運動は、膝軟骨や半月板にもいい影響があります。
軟骨には血管が無く、半月板にも外側周辺に少し血管があるだけで、栄養補給は滑液(かつえき)が担っています。
しかし、滑液にただ浸かっているだけでは、軟骨の内部までは栄養が届きません。
軟骨も半月板も水分が豊富で、水分が循環する事で内部まで栄養が届きます。
そしてこの水分の循環は、圧迫の繰り返しによって行われます。
膝関節に衝撃が伝わる事で、半月板などが圧迫伸縮され、滑液の循環が起き、軟骨組織が健康に保たれます。
逆に運動習慣のない人は、滑液の循環が滞り、半月板への栄養が不十分になります。
その結果、半月板や軟骨組織の劣化が早く進み、硬くて削れやすい軟骨組織になってしまいます。
軟骨組織が劣化してしまう前の、若い頃からの運動習慣が膝痛予防には最も効果的になります。
ウォーキングを運動に入れるべきかどうかについては、議論が分かれると思います。筋力維持や有酸素運動になるかどうかという事です。
わたくしは、ウォーキングは、カロリー消費効果はあるけれど、運動効果(筋力維持)は少ないと考えています(個人的な意見です)。
高齢者が行う自転車の運動効果についても議論が分かれると思います。
筋力維持や有酸素運動にはなりますが、骨粗鬆症予防と軟骨への栄養循環と言う観点からは疑問が残ります。
備考:運動が膝痛予防になると書きましたが、ただ運動すれば膝軟骨の摩耗を防げるわけではありません。変な動き方で運動をすれば、膝の軟骨は当然すり減ります。ただ運動をすればよいのではなく、正しい本来の動き方で運動する事が膝機能を高めることになります。
疑問その②
「膝痛は、何が痛いのか?」
膝関節の軟骨や骨は痛みを感じないと書きました。
では、膝の何が痛いのかと言うと、膝関節を包み込んでいる滑膜(かつまく)や関節包、関節包と接する所の骨膜、関節の脂肪組織が痛みを感じています(諸説あります)。
骨折して痛いのは、骨自体ではなく、骨膜が痛みを感じています。
ちなみにシンスプリントも骨が痛いのではなく、骨膜が炎症を起こして痛みを感じています。
脂肪組織も痛覚が豊富で痛みを感じやすいです。
腸脛靭帯炎、鵞足炎も靭帯や腱が痛いのではなく「脂肪組織」が痛みを感じている、という説もあります。
緑色の部分が滑膜。関節包の内側にあり、滑液を分泌する役割もある。
半月板がすり減ってしまうと、関節を曲げる度に骨がズレて周辺の組織を過度に引っ張ったり、押しつぶしたりしてしまいます。
この繰り返しによって周辺組織で炎症が発生し、痛みを感じます。
膝痛の症状の一つである「膝に水が溜まる」のも滑膜や関節包が炎症を起こし、その防御反応として滑液が過剰に分泌されるからです。
関節包は、わずか10ccも余分に滑液が分泌されるとその圧力で痛みを感じてしまいます。
10ccは、ペットボトルのキャップに水を入れて、その二杯分でしかありません。
滑液が過剰に分泌されると、関節包内部の圧力が高まり、さらに痛みが悪化するという悪循環になります。
膝痛の人は、階段などの上り下りで膝が痛いと言いますが、それは膝関節を曲げると関節がズレしまっているからだと考えられます。
疑問その③
「膝に良いとされるサプリメントは効果があるのか?」膝痛予防に効果があるとされるサプリメントには、コンドロイチン、グルコサミン、プロテオグリカンなどがあります。
膝軟骨や半月板は、一度すり減ったら再生されないと書きました。
という事は、膝関節に良いとされるサプリメントでは、膝の半月板を修復できないという事でしょうか?膝痛予防にはならないのでしょうか?

(ジオン公国ギレン・ザビ総帥)
サプリメントによって、少なくなった滑液が増えることはありません。
サプリメントによって、膝軟骨が再生することはありません。
膝関節の滑液は、正常時では1~4ml程度しかなく、「膝関節を湿らせて潤している」程度の量です。
ペットボトルのキャップの半分程度の量です。
その程度の僅かな量しかない滑液が足りなくなるというのは、長期に渡る運動不足か、長期間の深刻な栄養失調状態が原因であり、サプリメントで解決できる問題ではありません。
前述の通り、滑液が増えると膝関節は痛みを感じます。
滑液を増やして痛みをなくす、という事はあり得ないと言えます。
サプリメントで滑液の成分が良くなるというのも、考えられません。
少量である滑液の成分が劣化するというのは、体全体の栄養不足が原因であり、栄養失調状態です。
サプリメントでは解決できなく、食事でしか解決できないことになります。
膝痛を訴える患者さんで、栄養失調状態の人は、殆どいないそうです。
疑問その④
「ランニングで膝が痛くなる原因は?」
膝関節は、足関節、股関節に挟まれ、双方の関節の動きを強く受けてしまうという構造的な特徴を持っています、と書きました。
そして体のひずみが集中しやすい場所である、と書きました(代償動作が出やすいと言います)。
という事は、ランニングで膝が痛い場合、その原因は膝ではないという事になってきます。
これは極めて重要です。
ランニングでの膝の動きは、膝自体が動きを決めているのではなく、足関節、股関節の動きによって決まります。
腸脛靭帯炎、鵞足炎、膝裏が痛いのも、「痛みと言う結果(症状)が膝に出ている」のであって、その原因は殆どの場合膝にはありません。
膝は、被害者であって、加害者ではないのです。結果と原因の場所は異なります。
股関節の稼動不良、足部の不安定性、着地の場所、方法などが原因になってきます。
2019年09月24日
【ランニングと膝】膝の構造についてその①
【膝関節の衝撃吸収の仕組み】
膝関節は、幅広い関節面をもつ人体最大の関節です。

太ももの骨(大腿骨だいたいこつ)は、骨全体が太くて丈夫な構造になっていますが、膝関節部分になると骨の太さが2倍以上太くなり、さらに頑丈な構造になります。
幅広い関節面は、大きな負荷にも耐えられます。
一説では、2.5トン以上の荷重にも耐えられるとも言われています(どうやって実験して計測したのか不明)。
一方で、ランニングで痛めやすい場所でもあります。腸脛靭帯炎、鵞足炎、膝裏の痛みなど。
膝にも走る為の機能があります。
膝の使い方を知ればランニングパフォーマンスが上がり、ケガを防ぐことが出来ます。
でも膝の使い方を知らなければケガしかしません。
膝に関する記事なので、膝のケガや膝痛(ひざいたと読む、変形性膝関節症のこと)の話しが少し多くなります。
なのでランニングをやっているかどうかに関係なく、女性の方には是非読んで欲しいと思っている内容です。
ランニングと膝の記事は、
①膝の構造
②膝のランニング機能
③膝のケガ
の順番で掲載します。
今回は、①膝の構造について観ていきます。

膝関節は、関節面が二つに分かれていて、二点で身体を支える構造になってます。
この関節面が二点に分かれているというのが、ケガ予防だけでなく、ランニングパフォーマンスを向上させるためにも重要になってきます。
関節面の骨の表面には、軟骨組織(上の画像の緑色の部分)が付着し、関節が滑らかに動くようになっています。
さらに関節の内側と外側に半月板と言われる特殊な大きな軟骨組織(上の画像の緑色の部分)があります。
この半月板は、関節を滑らかに動かすだけでなく、太ももの骨と丁度ぴったり合うようになっていて太ももの骨を安定させています。
半月板は柔らかく出来ていて、衝撃を吸収する機能も持っています。
そしてその関節を「膝のカプセル」と言われる関節包(上の画像の緑色の部分)が包み込んでいます。
関節包の中は、粘り気のある滑液(かつえき)で満たされ、関節を滑らかに動かし、衝撃を吸収する機能も持っています。
粘り気のある液体は衝撃吸収の力が高まります。自動車のオイルダンパーと同じ仕組みです。
ちなみに滑液は、軟骨組織への栄養補給も行っています(これは膝痛予防には重要な知識になります)。
滑液の成分の一つが、有名な「ヒアルロン酸」になります。
膝関節は、これらの構造により、圧倒的な滑らかさを誇ります。
その滑らかさは、綺麗に磨いた氷のスケートリンクの上をスケート靴で滑るよりも遙かに良く滑り、世の中の殆どの工業製品の滑らかさを上回ると言われています。
ボールべアリング(車輪などの軸受の部品)と同程度の摩擦係数と言われます。←これはとんでもなく凄い事。
要するに膝関節は2.5トンの重さにも耐えられ、極めて滑らかな構造をしている為、本来なら「膝の使い過ぎにより軟骨がすり減る」と言う症状は、起きないはずなのです(トップアスリートは除く)。
フルマラソンを何百回走っても、月間300~400キロ以上のランニングを何十年と続けても、歳をとっても、膝関節はすり減ることはないはずなのです。
しかし実際には、膝痛(ひざいた、変形性膝関節症)に悩んでいる方は、非常に多くいます。
膝痛は、かなり痛いです。走るどころか歩くことも出来なくなります。
ですのでウォーキングも旅行も出来ず、スーパーに買い物に行くのも苦痛になって日常生活にも支障が出ます。
当然、運動も外出も遊びにも行けなく、家にこもりがちになるので筋力低下が進み、認知症にもなりやすくなります。

膝痛は、膝関節の半月板(軟骨)がすり減っていることが原因です。
すり減り方の特徴は、必ず内側の半月板だけがすり減ります。外側の半月板がすり減る事は、無いと言えるくらいです。
膝痛の自覚症状のある患者数は、現在1,000万人いて年々増加の一途を辿っています。
そして潜在的患者数は、3,000万人いると推計されています。
無作為に選んだ中高年男女3,040人の調査では、40歳以上で膝痛症状のある人は、男性42%、女性61.5%。
膝痛は、年齢とともに増加しますので、60歳以上の女性の方で膝に何の障害も無い人はかなり少ないと言っていいと思います(たぶん80%くらいの人が膝痛になるかと)。
本来ならすり減るはずのない膝関節。
何故、このような矛盾が生じてしまうのかと言うと、膝関節が持っている構造的な弱点(特徴)があるからです。
この弱点を知っていれば、ランニングでも膝のケガを防ぐことが出来ますし、パフォーマンスも上がります。
膝関節の弱点(特徴)①
【痛みを感じない構造になっている】
膝痛の潜在的患者数が3,000万人いるという推計がされてますが、その根拠の一つがO脚、X脚、外反母趾、肥満になっている人の数になります。
О脚や外反母趾、肥満の方は、将来的に膝痛になる可能性がかなり高いです。
О脚と外反母趾と肥満を合わせ持つ人は99%膝痛になります。
しかし実際には、20歳代~30歳代でО脚であっても膝痛になる人は少なく、何の支障も無く日常生活を送れています。
何故このような現象が起きるのでしょうか?
膝関節の軟骨や半月板は、痛みを感じないように出来ています(痛覚が無い)。
さらに関節包の中には、骨膜も無く骨同士がぶつかっても痛みはそれほど感じないと言われています(骨同士が直接ぶつかると骨の破損や変形は起きると思われる)。
ちなみに骨自体は痛みを感じなく、痛みを感じるのは骨膜です。
骨折して痛いのは、骨ではなくて骨膜が痛みを感じているという事になります。
備考:軟骨が完全にすり減り、骨同士がぶつかり始めると骨が損傷します。そうなると骨の中の毛細血管が修復のために伸びて、痛みを感じやすくなる、という説もあります。毛細血管が膝関節まで伸びてしまうと痛覚が発生してしまい、症状が悪化して何をしても痛いという状態になってしまいます。
О脚、X脚、外反母趾の人は、ほぼ間違いなく膝を正常に使えていません。
その結果、常に膝関節の一部分に負荷が集中して軟骨や半月板を少しずつすり減らしてしまっています。
しかし軟骨も半月板も痛みを感じないので、これらの組織が完全に壊れて、膝関節が修復不能になって取り返しのつかない状態になって、初めて痛みを感じます。
軟骨も半月板も殆ど自己修復できない組織なので、一度すり減らしてしまえば元に戻る事はありません。
膝痛の自覚症状が出てからでは、完全に手遅れになります。
ですので、膝痛は歳をとってから発生するのではなく、О脚や外反母趾、運動不足、肥満になった瞬間から膝の軟骨組織の摩耗が始まり、20年~30年かけて膝の軟骨がすり減って、その結果痛みが発生します。←極めて重要。
要するに、膝痛の原因は20歳代から始まっているという事です。
決して「歳だから膝が痛くなる」訳ではありません。
「歳だから膝の軟骨がすり減った」訳ではありません。
20歳代から歪んだ姿勢を続けた結果です。
膝関節の弱点(特徴)②
【圧倒的に不安定】
膝関節(正式名称は大腿脛骨関節)は、スネの骨(脛骨けいこつ)の上に太ももの骨(大腿骨だいたいこつ)が乗っているだけです。
解剖学の教科書には、骨の形状により「著しく不安定」とまで書かれています。
前後方向の安定性は、大腿四頭筋やハムストリング、前十字靭帯、後十字靭帯で保っています。
しかし左右を支えている筋肉は、ほとんど無く、靭帯がいくつかあるだけです。
決して弱い靭帯ではありませんが、体重を支えるには不十分な靭帯です。
その為、膝関節は左右の動きや捻じれの動きに対しては非常に弱くなっています。
膝関節の弱点(特徴)③
【体のひずみが集中してしまう】
では、膝関節はどうやって左右の安定性を保っているのでしょうか?
膝関節の左右の安定性(動き)を保っているのは、実は「足関節」と「股関節」になります。
足関節(距腿関節きょたいかんせつ)は、左右を骨に挟まれて支えられています(上の画像緑色の部分)。
股関節(寛骨臼大腿関節かんこつきゅうだいたいかんせつ)も骨格によって左右の安定性が保たれてます(上の画像緑色の部分)。
股関節は、さらに強力な靭帯によって完全に包み込まれています(上の画像緑色の部分)。
この二つの関節は、「動かせる関節」です。
足は、地面と接する事で固定できます。
股関節も骨盤が体幹によって固定できます。
片方の骨が固定されれば、関節は力強く動くことも出来ますし、体がブレないように安定させることも出来ます。
膝関節は、足関節、股関節に挟まれ、双方の関節の動きを強く受けてしまうという構造的な特徴を持っています。
膝関節は、動かす関節ではなく、「力を伝える関節」と言えます(関節なので支える機能は当然ある)。
股関節や足関節の動きを邪魔しない為に、膝関節はあえて単純な構造になっています。
膝関節は、足が「本来の着地場所に着地」する事を前提に進化しています。
膝関節は、股関節が「本来の方向へ動く」事を前提に進化しています。
私達が足関節と股関節を本来の使い方をすれば、膝関節も安定するという仕組みになっています。

逆に足や股関節に異常や不安定性があるとそのひずみは、膝関節に集中します。
前述の通り、足関節も股関節も骨格や筋肉によって強力に守られています。
ですので少しくらい変な使い方をしても、その痛みが出る事は少ないのです。
しかし膝関節は、関節を守る筋肉や靭帯は少なく、双方の関節の影響を強く受けてしまうので、ひずみが集中して痛みが発生しやすいという特徴を持っています。
2019年08月03日
【相馬剛に教えてもらった】後編
つい最近です。相馬剛さんに教えてもらった走り方が分かったのは。
完全に理解し、解明できた


不思議な感覚です。
間違いなくこれだ

それは、わたくしの走り方が上手いという意味ではありません。
走りの理屈が分かったという意味です。
ランニングフォームに対する今までの様々な疑問が解決し、人体構造上の理屈にも合っているのです。
5年以上かかってしまいました。答えに辿り着くのに。
それまでもフォーム改造は、かなり出来ていました。たぶん80%以上は出来ていたと思います。
でも一方で「何かが確かに足りない」という事も確かに分かっていました。
一つは、腕振りの質量問題です。脚と腕の質量バランスが取れていないのです。
もう一つは、再現性の問題です。ある程度の速さで走るとフォームが良くなって、まとまってくるのですが、1㎞5分以下のペースになるとフォームが乱れやすいのです。
これは人類進化と矛盾します。
人類は、もともと1㎞5分くらいのペースで走るように進化しているはずです。
アフリカの草原を、裸足で走って持久的狩猟を行っていた人類は、それほど速く走れないのです。気温は高いし、地面は不安定だし。
せいぜい1㎞5分くらいかそれ以下のペースです。わたしたちは、アスファルトの上をシューズを履いているので速く走れるだけです。
人類はそのくらいの速さで走るのに適した進化をしているはずです。
だから、1km5分以下で走ってフォームが乱れるというのは、理屈に合わないのです。
何かが足りない。
最後の答えが分からないまま、それでもフォーム改造は80%以上は出来ています。
確かに結果は出ました。
フルマラソンのベストタイムを10分更新。
トレラン大会でも、地方のローカル大会ですが、年代別の表彰台に立つことが出来ました。
あれだけ苦手な登りでも引離されなくなりました。
そして何より嬉しいのは、現在に至るまでケガを全くしなくなりました。
鵞足炎も、あの足底腱膜炎も。
今現在、膝のストレッチも足裏のストレッチも一切やっていません。足裏を揉むのもやめました。
足の指の体操やタオルギャザーも一切やめました。
それでもわたくしの足底腱膜は、全く痛む事が無くなりました。
2016年、2017年、2019年ONTKE100(ウルトラトレイル大会)を走っても、足裏は全く違和感なく、触っても一切痛くありませんでした。
【フォームを変えるのは苦痛でしかない】
ランナーなら誰でもフォームを気にしたことがあると思います。
フォーム改善に取組んだことがあると思います。
しかし「フォームを変える」と言っても実際には部分的に多少変えていることが殆どです。
ちょっと変えているだけです。
それは「フォーム修正」、「フォーム微調整」と表現した方が正しいと思います。
フォームを変えてパフォーマンスをアップさせるという事は、全部を変えるという事ではないかと思います。
いわば「フォーム改造」だと思います。

「BORN TO RUN」という本の一節です。
この本は有名なランニング本であり、ベアフットランニング、ワラーチブームを巻き起こしました。
ケガに悩まされていたこの本の著者が、フォーム改造に取組み、その大変さを記述しています。
今までの人生で一度もやったことが無い動きをやるのです。
簡単に出来るはずがありません。
それは技術的な問題だけではありません。
筋肉そのものも今までと異なる使い方をしなければなりません。
地面から伝わる感覚も変わります。
フォーム改造に取組んで「走りやすい」なんて感覚には絶対にならないのです。
苦痛と違和感でしかありません。
体がギクシャクして走りづらい。
脳も体も新しいフォームを全否定してきます。
それでもそれに抗ってフォーム改造を続けるのです。嫌になります。
だからほぼすべてのランナーが「フォーム微調整」だけになってしまうのです。
フォアフット走法にチャレンジしても、足裏の着地場所だけ変えて、簡単にフォアフット走法(トレイル走法)を身に付けようとするのです。
「走りやすい」事と「パフォーマンス向上」は全くイコールにはならないと思います。
それは単に自分が動かしやすいように動かして「走りやすい」と感じているだけで、他のランニングフォームを知らないから比較できないだけです。
「走りにくいフォーム」イコール「悪いフォーム」と安易に判断して、いとも簡単にフォーム改造を諦めるのです。
今まで身に沁みついてきたランニングフォームを全部捨てて、全く新しいランニングフォームに作り替える。
そんな経験をしたランナーは、ほぼいないと言っていいと思います。
ここで言いたいのは、ランナー批判ではありません。
あなたがフォームを変えようと思ってチャレンジして「走りにくい」と思ったら、「正解かも」という事です(体の負担が増えてケガするフォームは間違いです)。
3か月間は、まともに走れないかもしれません。でもそれで「正解かも」です。
今までの自分を変えるのです。それくらいの時間がかかって当然です。
【相馬剛の走り方は正しい】
なんでわたくしが、ランニングに関する事を、出来るだけ人体構造に基づいて、細かく説明しているのか。
それは相馬剛の走り方が、教えてくれたことが、間違いなく正しいという事を証明したいのです。
この走り方は、「日本のランニングの常識」とはほとんど異なる走り方です。
何の実績もない一市民ランナーであるわたくしが、何か言ったところで何の説得力にもならないです。
だから運動生理学、スポーツバイオメカニクス、機能解剖学を学びました。
「人は、走る為に進化している」
そして人の体は、純粋なまでに「ランナー」です。
だからランニングに関する様々な疑問の答えは、「体」が知っています。
本当に正しい走り方は、体の構造と一致しているはずです。真実は、体が知っています。
そうでなければ辻褄が合いません。
私たちの知る日本のランニングの常識は、体の非常識かもしれません。

写真が残ってた♫♫ネット上の他人様の写真を無断転載しています。
今ならよく分かります。
あの日、あなたが、なんで私に走り方を教えてくれたのかを。
あなたが、なんであのような教え方をしたのかを。
あなたが教えてくれた事の本当の意味を。
すべてはトレイルを安全に走る為。
これはトレランを安全に楽しむためのテクニック。
今までのランニングに関する様々な疑問が一気に解決しました。
あなたに教えてもらった走り方が分かって、今はまた練習が楽しくてしかたないです。
トレイルで試したり、登りで試したり・・・・・・色々試して、工夫して・・・・・・・。
あの日、見えなくなったあなたの後ろ姿が、少し見えた気がして、とてもトレイルランニングが楽しいです。

2019年07月28日
【相馬剛に教えてもらった】中編
トレランツアーの後、早速相馬剛選手に教えてもらった走り方の練習です。

まず、「着地と重心移動と蹴る」を同時にやってみる。
うーーーーん・・・・・。
体が動かない。脚が動かない

そもそも着地と重心移動と蹴るを、どうやっていいかよくわからない。
今までと全然違う体の動かし方なので、脚が前に出ないのです。
100mほど進んだところで、立ち止まり、考える・・・・・・・・。
相馬選手がやっていた熱い地面の上をアチッ!アチッ!と言うような感覚で素早く脚を交互に動かす。
その場で足踏みみたいな感じになる。
そのまま走ってみる・・・・・・・・・やっぱり出来ない。
どうしても蹴ってしまう。蹴ってしまうので脚の戻りが遅い。
また立ち止まって、アチッ!アチッ!と足踏みをやる。
走ってみる・・・・・・・出来ない・・・・・・


その日は、5キロも走れず、練習を終えました。でも1時間以上は練習していました。
全然、走れない。進めない。
同じような事を2週間以上続けていたと思います。
この時、わたくしは既にサブスリーランナーでした。
普段の練習は、1㎞4分30秒ペースで走るのが基本で、週末は30㎞走をやっていました。
それが5㎞走るのに1時間以上

歩くのと変わらないペースです。立ち止まっては、考え込んで、アチッ!アチッ!とやってみて、また少し走る。
サブスリーランナーは、ランニングの上級者と言ってもいいと思います。
それなりに練習をして、それなりにランニングフォームも学んで。
わたくしもランニングの本やDVDやランニング番組を観てしっかり学びました。
肩甲骨を意識して腕をしっかり引く。
前傾姿勢で前に倒れ込む力で走る。
目線はやや下の方、身長の1.5倍~2倍くらい先の地面を見る。
拇趾球で着地して拇趾球で蹴る。
腰高で走る。
頭から糸で引っ張られるような感覚で走る。
ランニングフォームには、こだわりがあって、自信もありました。
それがランニングフォームを変えたら、全く走れない

2週間たっても、3週間たっても走れない。
普通のサブスリーランナーなら、絶対にやらないです、こんな事は。
だって既にサブスリーで走れるわけですし、自分のフォームが完全に出来上がっているわけです。
フォームを改造する理由がないのですから。
普通の人なら「このフォームは、走りにくい。この走り方は相馬剛だから出来るだけだ。」とか。
「走りにくい。この走り方は間違っている。」とか。
「そもそも人間は、骨格も体格も人それぞれなんだから、走り方も人それぞれで、自分の走りやすい走り方でいいんだ。」となってフォーム改造をあきらめるはずです。
この時の、わたくしは異常でした。
楽しくて仕方がない♫笑みが止まらない

ランニングの練習がこんなに楽しいなんて知らなかった。
「あの相馬剛に教えてもらった。相馬剛と同じ走りがしたい。」
「俺は今、理想のランニングフォームにチャレンジしているんだ

頭の中は、そんなことで一杯でした。
走りにくいとか、出来ないとか、難しいとか、そんな事、全く考えていませんでした。
相馬剛が教えてくれたんだから、これが真実の、本当の走り方だ。
そこに何の疑問も迷いもありませんでした。
出来ないなんてことはこれっぽっちも考えていませんでした。
ウキウキしながら、ワクワクしながら、一人で道端でアチッ!アチッ!の練習を続けていました。
「そうか!脚の戻りが遅いんだ!蹴るから遅くなるんだ。蹴らなければ、脚を早く前に戻せて重心移動も早くなって、着地と蹴るを同じ動作にできる。」
「違う。どうしても蹴ってしまうのは、腕を後ろに引くからだ。力みにもなるし。腕は、肩甲骨を意識して引かない方がいいんだ。」
「腕を伸ばして振ると、反応が遅れて、脚とのタイミングがずれる。腕は伸ばさず、曲げた方が、脚とのタイミングが合わせやすくなる。」
「脚を早く前に戻すには、手を前で振ればいいんだ。」
「目線が下だと、アゴを引いたような姿勢になる。これだと腕が前に出にくい。目線は真っすぐ前をみよう。」
「骨盤を前傾にして、前傾姿勢を意識すると着地がしにくい。重心を体の真下に誘導したいのに、前傾姿勢で走ると脚が前に行き過ぎる。これでは着地が不安定だ。前傾姿勢は意識しないようにしよう。」
「母指球を意識すると、どうしても蹴ってしまう。母指球は意識しないようにしよう。」
最初は、全く動かない手足でしたが、小さな気付きを積み重ねて、少しづつ着実に走れるようになっていきました。
【その瞬間は突然やってきた】
急に体が前に進むような感覚に

体が軽くて弾むような、勝手に進んでしまうような感覚に

オッ!なんだこれ

いつもこの感覚を再現して走れるわけではなかったですけど、練習を重ねるうちに徐々に体が軽く感じる機会が増えてきました。
この頃になると、脚の調子も良くなってきました。
わたくしは、重度の鵞足炎(膝の内側の痛み。腸脛靭帯炎とは兄弟関係になります。)と足底腱膜炎患者です。
普通の人は、走り始めて長い距離を走ると膝が痛くなるものですが、わたくしは常に最初から膝が痛かったです。
膝を冷やして、揉んで、ストレッチして。
足底腱膜炎もかなり深刻で、トレランをやり始めてから重症化しました。
朝起きると歩くどころが、足を床に着けることも出来ないくらいに痛い!
膝と同じように冷やして、揉んで、ストレッチして。
痛みが軽くなっても、油断すると再発をして。
相馬剛に教えてもらう前にはトレランを辞めるつもりでした。
捻挫も連発するし、とにかくケガが多くて。ロードだけにしようと思ってました。
そんなわたくしでしたが、気が付けばどこも痛くない

長い距離を走っても、スピード練習をしてみても、どこも痛くない。
フォーム改造の間は、トレランは一切やっていませんでした。
フォーム改造に夢中になっていたので、トレランを後回しにしていたのです。
いつもの高根山(藤枝市)へ。
あれ❓登れる。
わたくしは、登りが超苦手です。とにかく登りが遅くてトレラン大会でも全く勝負にならないのです。
登りで散々抜かされて、ゴール前の最後のロードで抜き返すというランナーです(これではトレイルランナーじゃないじゃん)。
それが登りでも走れる。速くはないけど、歩かず走れる。凄い!
そうかフォーム改造で、重心を早く前に移動させる癖がついたんだ。
だからトレイルの登りも重心移動をスームズに出来る。蹴って登らないから、その分脚の負担が減って走れるんだ。
フォーム改造が身についてきたある日、ふとシューズの裏を見ると、シューズが今までと全く違う削れ方に!

なんだこれは!やってしまった!フォーム改造に失敗したかも!
最初、本当にそう思いました。
相馬剛は、フォアフット走法や前足部着地の事は一切話していませんでした。
踵着地をするな、とも言っていません。
今までのわたくしのシューズの削れ方は、踵と拇趾球が削れていました。それが正しい削れ方だと思っていました。
この頃のわたくしは、フォアフット走法は、踵を着けずに前足部で走るものと思っていました。
まだネット上でもフォアフット走法に関する情報は少なく、シューズの裏がどのように削れるかも知られていませんでした。
その日一日動揺していましたが、よくよく考えると、足のどこから着地するなんてことは、まったく気にしていなかったし、分からなかったし。
ケガも減ったし、登りも登れるし、体も軽く感じる様になって、スピードも出せるようになったし・・・・・・。
他にも体の変化がありました。
長い距離の練習やトレランをやると足首に痛みがありましたが、ほぼなくなりました。
フクラハギの筋肉痛や張りは格段に減りました。
太ももの前(大腿四頭筋)の疲労感も少なくなって、膝が楽になりました。
かといって走力が落ちているわけではなく、むしろ速くなってました。かわりにお尻の大臀筋に筋肉が付いているが分かりました。
フォームを変えていいことばかりなんだから、気にすることはないか。
【2014年7月26日】
フォーム改造を始めてから半年以上が過ぎていました。
体が軽くなってどんどん前に進むような感覚も、頻繁に出来るようになりました。
「とうとう俺は、理想のフォームを身に付けたんだ!!凄い!凄いぞ!!」
浮かれてました

トレイルの登りも走れるし、下りでも体が安定するようになって、疲れずに走れるようになっていました。
再発を繰り返した足底腱膜炎も鵞足炎も全く感じなくなっていました。
浮かれて走って、家に帰ると、ランナー友達からメールが。
「相馬さんなんだけど。この記事ヤバくないか?」
そこには相馬さんの事を伝える記事が・・・・。
晩御飯を食べるのも忘れて、慌ててネットを検索。
「これは、絶望的なのか・・・?」
2019年07月25日
【相馬剛に教えてもらった】前編
最近、急に走り方の記事が増えて驚いたかもしれません。
しかもかなりマニアックだし。
なんで急にこんな記事を書いているのか。
これはわたくしの結果報告です。
あなた一人、唯一人への結果報告・・・・・。
あなたへの私の素直な感謝の気持ちです・・・・・。
あなたが、あの日教えてくれた走り方を大切に、忠実にやり続けた人間がいる事を・・・・・。
あなたが、あの日教えてくれたことを、ひたすら追求している人間がいることを・・・・・。
あなたの教えてくれたことが、どれほど私を救ってくれたことか・・・・・。
あなたの教えてくれたことが、どれほど素晴らしいものか・・・・・。
そしてあなたが教えてくれた事の本当の意味を理解し、分かった今、それを残しておきたい・・・・・。
あの日、見えなくなったあなたの後ろ姿を追いかけ続けている人間がいる事を・・・・・。
2013年12月21日、とあるトレイルランニングイベントに参加しました。
山梨県本栖湖周辺の竜ヶ岳やパノラマ台、青木ヶ原樹海のトレイルを走る一泊二日のトレランイベントでした。
ツアー名は「クリスマスハッピートレイル」。
ビギナーコースとロングコースの二つが用意されていて、トレイルガイドが石川弘樹選手。
富士の麓の素晴らしいコースを一泊二日に渡りプロトレイルランナーと走れるので、ツアーはすぐに申込みで一杯になりました。
急いで申し込んで何とかロングコースツアーに参加できることになりました。
本当は、ビギナーコースに参加したかったんです。
なんでかっていうと、そっちの方が女子が多かったからです。
このトレランツアーへの参加目的は120%出逢い目的(婚活?)でした。
トレランなんか、どーでもよかったのです。
ロングコースだと、女子は少ないはずですし、女子がいたとしても本格派の女子でちょっと近寄りがたいですし・・・・。
でも一泊二日のイベントなので、宿泊先での交流会もあったのでチャンスはあると判断し、気合い入れて参加しました。
河口湖の集合場所から、トレイルのスタート地点である朝霧高原道の駅までマイクロバスで移動です。
ビギナーコース組とは、集合場所から完全に別行動です。
ビギナーコース組は、予想通り女子が半分以上で、石川弘樹選手は、ビギナーコースのガイド役になっていました。
初めて会う石川弘樹選手は、爽やかでした。
笑顔の時に、前歯が朝日でキラッと輝いてました。
ロング組は、女子は全体2割。しかも独身らしき女子は、2人くらいです。
ロング組には、特にプロ選手のガイドが付くわけでもなく、単なる逞しい男たちの集団と言った感じです。
と言うわけで、トレラン自体は、完全な消化試合、やっつけ仕事だと思ってやる気なしです

メインは、あくまで宿泊先でのレクリエーションだ、と狙いを定めていました(テッパンのネタも用意してありました)

スタート地点に着いたら、我々を待つ人影が。誰だ❓
そしてスタッフの方が、
「本日、急遽、ビッグゲストがトレイルガイドをしてくれることになりました。相馬剛選手と大石由美子選手です。」
なんだと


あの相馬剛



つい最近、プロに転向したばかりの最強トレイルランナーの一人。
アマチュア時代から他を寄せ付けない圧倒的な強さを見せつけ、日本で最もハイレベルなトレイル大会である、あのハセツネで2回優勝。
信越五岳トレイルランニングレースでは3連覇と言う偉業を成し遂げた

その彼の強さから「天才悪魔」、「漆黒のランナー」とまで呼ばれるほどの人物。
相馬剛選手と大石由美子選手は、別のトレランイベントに参加予定だったのですが、その週に降った季節外れの大雪のせいで、そのトレランイベントが中止となったそうです。
このトレランツアーの主催者が相馬剛選手と懇意で会ったことから、「スケジュールが空いたなら手伝ってよ。」と頼まれて、急遽参加してくれたそうです。
なんと、これは

わたくしのやる気が一気にMaxパワーになりました㊗。
相馬剛選手の走りを間近に見て、トレランテクニックを学ぶチャンス

そしてトレイルツアーがスタートです。
ロング組の人数は30名ほど。先頭と最後尾では結構離れます。
列の後ろの方を走っては、相馬選手の動きを見る事は出来ません。前に行かなければ・・・・。
しかしやる気とは裏腹に、わたくしは列の後ろの方にいました。
あまり最初からガツガツいくと、周りの人にも嫌われるし、相馬選手にも嫌がられるだろうし。
それともう一つ理由があって、なかなか前に行けなかったのです。
相馬剛は「怖い」

アマチュア時代からの逸話を知っていたので、近寄り難かったのです。
わたくしの知合いの女性が、相馬選手のファン(相馬選手は男前で女子に人気があります)で、トレラン大会に参加していた相馬選手に記念写真をお願いして一緒に写真を撮ったそうです。
ファンの人との写真撮影なら普通は笑顔で何かしらのポーズをするものですが、相馬選手は、完全な無表情・・・・・

一切笑わない、何の愛想も無し・・・・・・・


さらに何のポーズもとらず、ただ突っ立って撮影・・・・・



その記念撮影をしたおじさんは「相馬さんって怖いな~」とその時の感想を教えてくれました。
第一回ウルトラ・トレイル・マウント・フジ(UTMF)では相馬選手と奥宮選手とのスタート直前の会話を噂で聞きました。
奥宮選手(プロ)「相馬君、いよいよスタートだね。お互い頑張ろう!」
相馬選手(当時アマチュア)「はぁ~?これから戦いが始まるんだよ。何言ってんの。」
奥宮選手「・・・・・・・・・・・・・・」
スタート前から険悪なムード。
そして日本最大のトレイル大会がスタート。

<NHKBS放送のUTMFドキュメンタリー番組より>
奥宮選手は、フレンドリーに接したのに不作法で返した相馬選手を、後ろから煽り、プレッシャーをかける。

近すぎる二人。

近すぎる!完全に煽ってます。
相馬選手も一歩も引かず、大会そっちのけで喧嘩バトル。
あくまで噂です。
そんな話をいくつも聞いていたので、わたくしは近くに寄れなかったのです。
もの凄く話しかけたいし、質問したいし、教えてほしい・・・・・・しかしどうしたものか。
わたくしの内心とは関係なく、トレイルツアーは淡々と進んでいきます。もうすぐ半分の地点です。
このままでは、何もせずに終わってしまう。
とにかく前に行って、取りあえず相馬剛選手の近くで走ろう。
会話が出来なくても、あの人の走りから何かを学べるはずだ。
意を決して、列の前の方に少しずつ移動して、先頭から3~4番目くらいまで移動して、常に相馬選手の近くにポジションをとるようにしました。
ほのぼのツアーも後半に入ったところで相馬選手が「少し本気で走ってみましょうか」の一言。
ムムッ


相馬選手は、それまでと明らかに違うスピードでトレイルを駆けていく。
わたくしは、相馬選手の後ろを走る。
相馬選手は、当然早い。これでもかなり手加減して走ってくれているのだと思う。
走り始めてすぐに相馬選手とわたくしだけになりました。
目の前を相馬選手が走る。
む


あんな走り方見たことないぞ

相馬選手の体がバネのように弾みながら、ポンポンとリズムよくスムーズに流れるように、進んでいく。
それに比べ、わたくしの走りは、バタバタしながら動きに余裕が無く、無駄が多いような感じ。
相馬選手の動きは、速いとか遅いとかのレベルではなく、今まで見たことが無い動きでした。
走りながら、頭の中はパニックです。
なんだアレは❓なんの動きだ❓どうやっているんだ❓
しばらく行ったところで、相馬選手が止まり、後ろの参加者を待ちます。
わたくしは、興奮してすぐに質問しました。
ついさっきまで怖くて話しかけづらい、なんて感情はどっかに行っていました。
「相馬さん、なんですか


相馬選手「あ、アレね。」
そしたら何人かの参加者がすぐに合流しました。
他の参加者にも説明するような感じで話してくれます。
相馬選手「普通の走り方は、着地と重心移動と蹴るという流れで走るんだけど、それだと反応が遅れるんだよ。」
「だから重心移動を出来るだけ早くやるんだよ。普通の走り方は、脚だけ前に出して体が後ろになっている。着地してから体を移動させている。」
「この動きだと着地の時に脚の位置と体の位置がズレて不安定になるんだよ。だから出来るだけ脚を早く前に戻して重心を前に持ってくるんだ。」
実際に動きをしながら教えてくれます。
「例えばだけど、地面が熱く焼けていて、その地面を走ると熱くて、アチッ、アチッ、アチッと脚を交互に素早く動かすような感覚かな。」
そう言って、地面が熱い感じで走ってくれます。
「理想の走り方と言いうのは、着地と重心移動と蹴るを分けて行うのではなくて、同時に行うんだよ。着地、重心移動、蹴りを同時に行うんだよ。」
「別の言い方をすると、着地する前には重心移動が終わっていて、着地と蹴る動作が同じ動きになる。」
「もしこの動きをトレイルの登りでも出来たら、最高だよね。」
わたしは、頭が爆発しそうなほど、興奮していました。
多分まばたきも忘れていたと思います。
他の参加者は、単にプロトレイルランナーが走り方を教えてくれている、という当たり前の光景だったかもしれません。
しかしわたくしだけが、相馬剛のあの動きを見ていたので、その言葉の重みと価値が全く全然違いました。
これはとんでもなく大事な事を聞いている。
大変な事を教えてもらっている。そんな感覚で聞いていまいた。
この事をきっかけに、その日のトレランツアーは相馬選手にべったりくっついて質問攻めでした。
しかし、意外なことに「怖い、無口」の相馬選手のイメージと全く異なり、質問にも丁寧に全部答えてくれて、トレランの様々なテクニックも教えてくれました。
相馬選手「トレランの下りは休む所なんだよ。下りは集中力を使わないように余裕を持って走るんだ。登りは誰だって心拍数が上がって苦しくなる。その状態で下りを攻めると呼吸が続かなくなってしまう。人間は集中し過ぎると呼吸を忘れてしまう。下りを集中力を使って走ると呼吸を忘れてしまうんだ。そうなると後半一気にペースが落ちる。下りは、集中し過ぎないように走るんだ。」
相馬選手「下りで呼吸を忘れないようにする為には、あえて喋るのもテクニックだよ。喋るって事は、呼吸する事だから。下りでは集中し過ぎないように叫ぶのもテクニックだよ。」
そう言って下りで「ヒャッホーー

わたくしも同じように叫ぶ

相馬選手は、下りの急カーブで大きくジャンプして壁を三角蹴りの様な動きをして急カーブを減速なしで走り抜ける。凄い

そして下りが終わったところで、雪に頭からダイブ❢ドサッ❢❢
わたくしも雪にダイブ

他にも登りの歩き方や腕の使い方など、色々教えてくれました。
相馬選手は最初のイメージと全然違う人でした。
色々教えてくれて、喋ってくれて、雪にダイブしたりしてひょうきんで。
トレランツアーの初日が終わり、相馬選手と大石由美子選手とは、ここでお別れです。
これ程充実したトレイルツアーは現在に至るまでありません。最高でした。
もう当初の女子目的は、完全に忘れてしまいました。
わたくしの計画では、宿泊先でのレクリエーションで女の子と仲良くなる段取りでしたが、昼間のトレランで興奮しすぎて疲れて、もう女の子と喋るのが面倒くさくなって、無口な男子キャラに徹しました。
2019年07月22日
『フォアフット走法とは』後編
今回は、フォアフット走法の脚の動かし方が日本人と異なる点についてです。
NHKスペシャル「ミラクルボティー」の中で、マカウ選手が着地の直前で脚の「振り戻し動作」をしていることを取りあげています。

この振り戻し動作は、フォアフット走法の特徴の一つです。
ケニア人選手の多くがこの動きをしています。
NHKスペシャルでは、この動きが着地衝撃を減らしているという分析を行っていました。
日本人の着地は、進行方向に対して足をそのまま前に出して着地している。
その為、地面との速度差が大きく足が「地面とぶつかる着地」と解説しています。
一方、ケニア人は「振り戻し動作」によって地面との速度差が小さくなり、着地衝撃が減るという説明です。

では、この僅かな動きによってマカウ選手の着地衝撃が山本よりも39㎏も減るのでしょうか?
さらに言うと、着地衝撃が減ると速く走れるのでしょうか?
着地衝撃が減ることと「速く走れる」ことは、必ずしもイコールにはならないと思います(筋疲労は減るので持久力は向上するはず)。
着地によるブレーキが減るから速く走れるという事でしょうか?
そして筋力比較の記事で述べたように、ケニア人が日本人よりも股関節の力が1.7倍も強い力を発生させている説明にもならないです。
つまり「脚の振り戻し動作」には、着地衝撃を減らすだけではなく、別の機能があるという事です。

ケニア人と日本人の着地の際の骨格の動きを表しています。
一番左のスティックピクチャーが着地した瞬間で、一番右が離地した瞬間です。
スティックピクチャーは、体が5㎝動くごとに一本表示されます。股関節部分の間隔が5㎝毎という事になります。
赤いステックピクチャーは、太ももの骨が垂直になった時を表していて、着地動作の中間点と言う事になります。

このスティックピクチャーに番号を振って、脚が着地前半と後半でどのような動きをしているか比較してみます。
まず日本人の脚の動き(画像の下の段)ですが、着地前半は、45㎝移動し、後半は40㎝移動しています。
着地してから脚が地面から離れるまで、脚の動きの速さや体の進む割合に大きな変化はありません。
この動きは、「着地」→「重心移動」→「蹴る」と言う日本人の走り方に合致していると言えます。
ほぼすべての市民ランナーがこの走り方をしています。
一方のケニア人、と言うよりもフォアフット走法では、前半と後半で脚の動きと体の進み方に大きな違いがあります。
着地前半は、55㎝移動するのに対して、後半は35㎝しか移動していません。前半と後半では、20㎝も動きに差があります。
後半だけだと日本人よりも進んでいません。フォアフット走法では、着地後半に脚をあまり動かしていません。
注目すべきは、フォアフット走法の着地前半の移動です。55㎝も進んでいます。
フォアフット走法は、着地した瞬間に推進力を発生させ、体を前に進ませる走法だと考えられます。
この着地前半の動きは、ケニア人の筋力比較のデータと一致します。
ケニア人は、着地した瞬間に股関節で日本人選手よりも1.7倍も強い力を発生させています。
だから、着地した瞬間に大きく速く動くことが出来る訳です。
マラソンのテレビ中継などでは、ケニア人ランナーの走りを「バネのある走り」とよく表現されます。
ポンポンと弾むようなバネのある走り方は、この着地した瞬間の動きによるものです。
では、脚の「振り戻し動作」と着地した瞬間の脚の動きには、どのような関係があるのでしょうか。
NHKでは、「振り戻し動作」と言う表現を使っていますが、実際のランナーの動作感覚で表現すると、「振りおろし動作」あるいは「足踏み動作」と言った感覚になります。
つまり「蹴り動作」です。
フォアフット走法とは、着地する前から「蹴り動作」を行っているのです。

上の図のように、前に進んでいる脚を振りおろすような動きをすると、股関節の筋肉(大殿筋、ハムストリング)や腓腹筋に筋緊張が発生します。
これを「予備緊張」と言います。予備緊張自体は、強い力を発生させているわけではありません。
この予備緊張により、足関節、膝関節の腱組織の機能が高まります(SSC機能の向上)。
着地前から着地動作を始めているので、脚の各関節も着地に備えた角度に自然と誘導されます。
「振りおろし動作」をすることによって「着地準備が整う」訳です。
さらに振りおろし動作は、バイオメカニクス的にも極めて重要です。
この瞬間に既に推進力(重心移動)が発生しているのです。この事は、脚のバイオメカニクスに関連して説明する予定です。

一方の日本人は、図のように脚を前に出し続けて、そのまま着地しますので、予備緊張は発生しないか、少ないものになります。
着地準備をして着地するわけではなく、ただ脚を前に出し続けてそのまま落下するだけなので、必然的に踵着地になります。
踵着地は、以前に述べたように人体構造上やってはいけない着地方法です。
着地衝撃が増加し、ケガをするだけの着地です。
日本人ランナーは、振りおろし動作をしていないので、バイオメカニクス的な推進力も減少し、重心移動も遅れます。
では何故、日本人ランナーではこの振りおろし動作がみられないのでしょうか?
日本人ランナーでは、出来ない動作なのでしょうか?
振りおろし動作をするという事は、脚が一度前に出てから戻すだけの時間が必要になります。

ここでもう一度、スティックピクチャーの画像に注目してみましょう。今度は着地後半の脚の動きです。
日本人ランナーは、着地後半に40㎝移動してから脚が地面から離れます。
一方のケニア人は、35㎝移動したところで脚が地面から離れます。
という事は、ケニア人は脚が地面から離れるのが早く、その分脚を前に戻すのが早くなります。それだけではありません。

上の表は、ケニア人ランナーと日本人ランナーのピッチ、ストライドなどの比較表です。
赤い枠で囲った所に注目して下さい。
ケニア人の方が、滞空時間と非支持期距離が長くなっています。
非支持期距離とは、脚が地面から離れて次に着地するまでの距離です。片方の足が空中でどれくらい移動しているかを表しています。
ケニア人は、脚の滞空時間が長いので、その分脚を前に戻すことが出来ます。
脚を後ろまで蹴らず、伸ばさずに脚を地面から離し、さらに滞空時間も長いので前に出した脚を「振りおろす」事が出来ます。
振りおろし動作をするだけの時間があるという事です。
着地後に蹴る意識が強い日本人ランナーの走り方では、脚の戻りが遅く、さらにバイオメカニクス的な推進力も減る為、滞空時間が減ります。
その結果中途半端な態勢のまま着地することになります。
【理想の走り方とは】
フォアフット走法では、着地に対する考え方と感覚が明らかに違います。
日本人ランナーの走りは、「着地」→「重心移動」→「蹴る」と言う一連の流れで行ないます。
しかしフォアフット走法では、着地前から蹴り動作を始め、着地後の蹴る動作が日本人よりも早いポイントで行なわれます。
つまり「着地」と「重心移動」と「蹴る」を同時に行っているのです。←超超々重要

「着地した時には重心移動が終わっている」という事です。
重心移動は滞空時間の間に行っているのです。
フォアフット走法は、「蹴らずに走る」感覚になります。
フォアフット走法は、「着地重視の走り方」と言うような動作感覚になります(日本人は蹴り重視の走り方)。
【フォアフット走法という名前は間違い】
この記事では、フォアフット走法の誤解や先入観を解くために、客観的なデータや人体構造に基づいて書いてきました。

しかし実際の筋肉量や筋出力を調べると、実は日本人ランナーの方が、より多くの筋力を使い、より多くの着地衝撃を受けています。そしてケニア人よりも速くないわけです。
多くの筋力を使い、強い着地衝撃を受けるという事は、ケガもしやすいと言う事です。
実はケニア人の方が、人体構造に即した普通の体の使い方をしているのではないでしょうか?
そして日本人の走り方は、体に無理をさせる走り方と言えるのでは?
着地衝撃は、体重の3倍と言われています。
しかしフォアフット走法では着地衝撃は、体重の1.6倍でしかありません。
それってつまり私たちの走り方が、着地衝撃を3倍にしてしまっているのではないでしょうか?
日本人に合っていると言われている走り方が着地衝撃を3倍にしてしまっているのではないでしょうか?
今回、画像資料に使用したNHKスペシャル「ミラクルボディー」や文庫本「42.195㎞の科学・NHKスペシャル取材班」の中でも、つま先着地ばかりにフォーカスしています。
着地衝撃が少ないのは「前足部着地だから」だとしています。
ドラマ「陸王」でもフォアフット走法が出てきます。
「フォアフット走法の方が速く走れる」としています。
しかしフォアフット走法で着地すると着地衝撃が39kgも減るという解釈は、いくら何でも無理があります。
39kg分の着地衝撃が一体どこに消えてしまったのか全く説明できません。
フォアフット走法だから速いという説明の仕方にも疑問を感じます。
フォアフット走法は、踵着地に比べブレーキをかけないから衝撃が少なく、速いという説明にも無理があります。
衝撃が少ないのなら、何故フォアフット走法の練習をやるとケガをするのでしょうか?ケニア人はケガしないのに。ケニア人の方が筋力も少ないのに。
速く走れるという事は、運動エネルギーが多いというです。
ではその運動エネルギーはどこで発生しているのでしょうか。
前足部着地だから筋出力が高まって推進力が増すなんてことは無いのです。
NHKでも陸王でも、それらの事には一切触れられていません。
どんなスポーツでもパフォーマンスをアップさせるには、体全体に注目してその動きを真似たり、分析したりします。
足首、膝、股関節の角度、そして腕と胴体の動きとタイミング。それらがすべて揃って初めてランニングのパフォーマンスがアップします。ケガのリスクも減らせます。
ところがマスメディアは、何故かフォアフット走法に関しては「つま先着地」だけに着目して、その他の体の動かし方については一切取りあげず、調べようともしません。
腕や胴体の動かし方については全く無視しています。
フォアフット走法における多くの誤解は、その名前だと思います。
「つま先着地」と訳され、踵を地面に着けずに走ると思われている事です。
フォアフット走法という言い方は、間違いの元なので、個人的には別の言い方にした方がいいと思っています。
例えば、ケニア人ランナーもメキシコのララムリも未舗装の山道で生活しています。
そうなんです。彼らは生まれながらのトレイルランナーです。
だから、「トレイル走法」とネーミングする方が合っていると思います。
【まとめ】
・フォアフット走法は、体に優しい走り方。ケガのリスクも減らせる走り方。
・フォアフット走法は、「つま先着地」でも「前足部着地」でもない。腕と肩と腰の動かし方とタイミングによって結果としてフォアフット走法になる。
・フォアフット走法は、体の構造に基づいた人間本来の走り方。だから誰にでも出来ます。初心者、男女を問わず誰にでも出来ます。
・フォアフット走法は、筋力を抑える走り方。フォアフット走法にフォームを変えてもフクラハギを痛めることはありません。痛めた方は、考え方とやり方が間違っています。
・フォアフット走法(理想の走り方)とは、「着地」と「重心移動」と「蹴る」を同時に行う動作感覚。
【最後に注意点】
フォアフット走法前編・中編・後編の記事の中でケニア人ランナーの特徴について書きました。
「着地の時に股関節や膝が曲がっている。」
着地前に脚の「振り戻し動作」、「振りおろし動作」をしているなど。
これらの動きは、決して意識して行っているわけではありません。走る際の自然な流れで適度に動いているだけです。←凄く重要。
ですので、意図して腰を落として、膝を曲げて走らないでください。腰と膝を痛めます。
無理して振りおろし動作は、行わないでください。ハムストリングを痛めます。
腕の振り方や肩と腰の動かし方を変えずに、股関節や膝だけを曲げるとかえって筋肉の負荷が増大する可能性がありますので、やらないようにして下さい。
2019年07月07日
『フォアフット走法とは』中編
今回は、日本人とケニア人との筋力比較です。
ケニア人と言うよりも、「フォアフット走法」と「日本人の走り方」の筋力比較と言った方が正しいと思います。
「フォアフット走法」は筋肉の使い方、付き方が明らかに変わってきます。

上の表は、日本人とケニア人の筋力を比較したものです。
表の赤い四角で囲んだ筋肉に注目して下さい。
「深部底屈筋群」とは、足の指を曲げる筋肉と後脛骨筋(こうけいこつきん)のことです。
つま先立ちやウィンドラス機構の際に使う筋肉です。
「下腿三頭筋」は、アキレス腱に繋がるフクラハギの筋肉です。
これらの筋肉は、ランニングの際に蹴る為の筋肉と思われています。
そしてフォアフット走法にチャレンジした方のほとんどの方が痛める筋肉です。
フォアフット走法をやるには、後脛骨筋、つま先、フクラハギの筋力が無ければ出来ないとされています。
比較すると絶対値も相対値(脚の断面積に対する割合)もケニア人の方が筋肉は小さくなっています。

上の表は、ランニングの際に脚の関節がどれくらいの力を発生させていたかを表しています。
横軸が時間を表しています。着地から次の着地までの脚の動きを100分割して計測しています。
グラフの横軸0が着地した瞬間で、横軸25くらいまでが接地している場面です。
足関節のグラフに注目です。
紫のグラフで示したケニア人の方が、わずかですが日本人を上回っています。
しかし前述の通りケニア人の足関節の筋肉は、日本人より小さいです。
ケニア人は、足首の筋肉が小さいにも関わらず、日本人よりも強い力を発生させています。矛盾しています。
この事は、マカウ選手と山本選手の腓腹筋の比較とも一致します(「フォアフット走法とは前編」の記事参照)。
同じ速度で走るという事は、足関節は同じくらいの力を発揮しているという事です。
マカウ選手は、山本選手よりも腓腹筋に力を入れていないにもかかわらず、同じだけの力(同じ速度)を発生させています。
これは今までブログで説明してきた足の指と足首の機能構造によるものです。
人間の足首は、「適度に曲がる方が無理なく最大出力を発揮できる」と言うものです。
そして「足の指は、使うのでなく、機能させる」です。
足の指が機能し、足首が曲がるとウィンドラス機構が完全に発揮します。
すると第二てこの原理が作用し、フクラハギの力が増幅されます。
逆に指に力を入れて指を曲げたり、蹴ったりして足首を伸ばすと、大きな力は発生せず筋肉の負担が増すだけになります。
ケニア人の走り方は、人の体が本来持っている機能を使っているだけと言えます。
膝関節のグラフも見てください。
膝関節は、日本人の方が強い力を発生させています。
実際の動きの比較でも、日本人の方が膝が曲がっていないので、力を入れて膝を曲げないようにしている事が分かります。
一方股関節のグラフでは、ケニア人は1.7倍も強い力を発生させています。
ケニア人は、股関節周辺の筋肉をメインに使い、股関節で強力な力を発生させ、太ももを速く動かして走っていると判断できます。
つまりフォアフット走法とは、股関節の筋肉を強力に使う走法と言えます。
股関節の筋肉と言えば大殿筋とハムストリングです。
ハムストリングに関しては日本人、ケニア人で目立った違いはみられません。
資料の中に大殿筋に関するデータが無いので、比較ができませんでした。
しかしフォアフット走法をやると明らかに大殿筋が発達してくるので、ケニア人は大殿筋が大きいと予想できます。
逆に中殿筋は、日本人の方が大きいのではないかとわたくしは考えています。
中殿筋のデータも無いので予想になりますが・・・・・・・・・。フォアフット走法では、中殿筋の負担が減るはずだと思ってます。
腹筋(外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋)や腸腰筋(大腰筋)、腰方形筋などの体幹の筋肉にも明らかな違いがありました。
ケニア人の方が体幹の筋肉が発達して大きくなっています。
一般に言われている「腹筋が割れる」筋肉は、腹直筋です。腹直筋(ふくちょくきん)は、日本人とケニア人で全く差はありませんでした。
腹直筋は、歩行やランニングの際に余り使われない筋肉です。
これは日本人の体幹が弱いわけではありません。
現に日本では体幹トレーニングを積極的に行っています。
それに比べてケニア人は、体幹トレーニングをしていないようです。やったことも無いので体幹トレーニングが苦手だそうです。
それにも関わらず、体幹の筋力はケニア人の方が明らかに大きくなっています。
つまりフォアフット走法は、体幹をしっかり使って走る走法だとも言えます。
さて、いくら大きいとは言え大殿筋だけで股間節の力が1.7倍にもなるのでしょうか?
ケニア人の大殿筋は1.7倍も大きいのでしょうか?
実際のケニア人ランナーの体格を見てもそこまで大殿筋が発達しているようには見えません。
つまり私たちの体には、股関節の力を増幅させる仕組みがあると言いう事です。
ケニア人は、その体の仕組みをうまく使っているだけです。
股関節の機能構造もブログに載せる予定です。それを見れば股間節の力が増幅される仕組みも分かると思います。
次回は、フォアフット走法の脚の動かし方が日本人と明らかに異なる点を追究します
